手軽に安く宿が確保できる民泊は人気があります。ホテルがどこも満室の時や、高すぎて泊まれない時などは、空いている部屋や家を貸してくれる人はありがたい。使った人は、家主さんにも、マッチングしてくれた人にもお礼を払いたいというビジネスの発想は素晴らしいと思います。
しかし、市場が進んで民泊が儲かるとなると専門業者が出てきます。これが、当初の思惑とは違った方向に世の中を変化させます。ホテルは規制や価格でゆるい相手と同じ土俵で競争する不公平感が出てくるし、物件オーナーは住宅用ではなく民泊用として自分の物件を提供したいと考えるようになります。
結果、民泊専門業者に利益が集まる。その利益のもとはと言えば、部屋を提供してもいいよといってくれた家主さんや、厳しい規制で営業しているホテルからのもの。一方その地域では家賃が上がり低所得者層を圧迫し貧富の差が広がっていく。
これは想像や作り話ではありません。民泊が先行しているアメリカで実際に起こっていることなんです。
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米国では民泊で何が起こっているのか? エアビーによる不動産市場や住民生活への影響、研究グループが調査報告書を公開 | トラベルボイス(2018年2月8日)
マギル大学の研究グループ報告書によると、ニューヨーク地区のエアビー宿泊売上は、違法性が疑われる登録物件によるものが全体の3分の2を占めている。自宅の一部ではなく、一軒家やマンションの居室を丸ごと貸し出す物件は登録物件全体の約半分を占めるが、その売上は4億9000万ドルで全体の75%。一軒家を丸ごと貸し出している物件の約9割(87%)が、ニューヨーク州法に違反していた。
同レポートでは、「昨年のニューヨークにおけるエアビー売上の66%(4億3500万ドル)、予約の45%が違法」と断じている。
またエアビー普及に伴い、地元住民向けの居住物件が減少していると指摘。ニューヨークの長期レンタル向けの賃貸物件市場では、供給数が推定7000~1万3500軒ほど縮小。これに対し、エアビーには120日以上のレンタル物件1万2200軒、240日以上では5600軒が登録され、頻繁に利用されている。
賃貸物件が減少した影響で、過去3年間にニューヨークの長期滞在向けの家賃相場は1.4%上昇(中央値で比較した場合)。今年の家賃相場は同380ドル値上がり、マンハッタンの一部エリアでは、700ドル以上の値上げとなるケースも出ている。
個人が自宅の一部を貸し出すのではなく、複数のエアビー物件を管理する「商業目的」のオペレーターは、ホスト全体の12%に過ぎないが、ニューヨーク市における売上の28%以上を獲得。また昨年は、売上のほぼ半分(48%)を、上位10%のホストが獲得。これに対し、下位80%のホストの売上は、全体の32%だった。
一時的に不足した宿泊需要を臨時に補うのが民泊の存在意義だと思います。専門業者は、それ以上のものを狙うことになると思いますが、それであれば既存のホテルとの兼ね合いや、エリアの住宅用不動産との兼ね合いの調節が必要です。
これは市場に任せておけばいいという楽観的なものではないと感じています。